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体験談や自作小説。日々の出来事をつづっています
by mamikirakira
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skin by excite
disaster.2 つばさ はばたく【3】
ざわめく木々とさざめく草花、異様な湿った空気と漆黒のまとわり憑くような霧を、囲むように東京管轄のジュリ(役職名)達が人の魂に触れ審判を行っていた。
 彼らの頭上に下された審判の対象者を連れ去るため、魂に安らぎと転生を司る翼ある者が幾人も翼をおおきく広げ羽ばたき、木々の陰、人の影、暗闇のあるところから苦役と後悔をもたらす者たちが這出る姿もあった。
ジュリの傍らには大きな鎌で魂を捕らえた者が、手を震わせ額に汗を浮かべている。逃げ惑う魂を留めておくのはかなりの体力と精神的苦痛がともなうと聞いていたが、まさにその状態だった。
 しかし、おかしな事はこれだけではなかった。
底なし穴のような霧を中心に乳児と女性の魂ばかりが何体も浮遊しており、それらの遺体は一つも辺りに見当たらない。
漆黒の霧の中から間を置いてそれらの魂がはじき出されているのだ。

「これはいったい・・なに?!」

 キメラの体は無意識のうち震え、握りこぶしを作った手は自然と胸へとあてる。
知らぬ間に後ずさりしていたらしく後ろに立っていたクーにぶつかった。
クーはキメラの背を押すと苛立たしげに前を見据えた。

「もうすぐ出てくるわ・・」

 彼女の言葉の通り間もなく漆黒の霧は怪しげな揺らぎと共に辺りに散り、その中心にいた者をあらわにした。

「ぐはぁ・・・。かはっ!!ゴホッゴホッ」

 苦しげなうめき声を上げ、半ば倒れかけている20代前半の男性は波打つ緑の髪が腰まである30代前半と思われる男性に支えられながらようやく立っている様子だった。
彼らはの足元には公園の池があり、膝下から水に浸かっている。澱んで空き缶やコンビニのビニールが浮かぶ汚い水辺の不快さに比べて辺りに散り出た漆黒の霧からは憎悪にも似た嫌な感覚が吐き気を呼ぶほど強かった。
 水面を乱し軽い水しぶきを上げながら彼らは重い足取りで池から出る。
30代半ばのキメラと同じように民族衣装を纏った男は、キメラたちに気付くとまだ息荒く苦しげな男を支えたまま彼女達に歩み寄った。
艶のある長い髪が重たげに一束彼の肩から胸へ流れ落ちる。優しそうな面持ちにどこか男らしい力強さを思わせる表情。彼の澄んだ群青色の瞳がキメラたちを捕らえた。

「急を要して申し訳ありません。この通り東京管轄の方には全員に手伝ってもらっています。これから、関東支部から応援も来ます」

穏やかな口調の中に凛とした強さを伺わせる。クーは一歩歩み出ると彼らに手を差し伸べた。

「ミルク・ティ様。私達も微力ながら手伝います!」

「いえ、ここは彼らに任せてあなた達には他の事をおねがいしましょう」

少し微笑みを湛えながら、ミルク・ティは懐でうなだれる男性に視線を移した。男はミルク・ティから体を離しゆっくり顔を上げる。
こげ茶色のベリーショートな前髪を少し長く残して立てた髪に、その髪と同じ色の瞳。幼さの残る面持ちにきりりとした太めの眉が印象的だった。

「すまねぇ・・。獲物捕りにがしちまった。予想以上の数の魂を取り込んでいて、そいつでオレを動けなくしてたんだ。ヤツの想いがむちゃくちゃ強くて、引きずられた魂がヤツの思いとおりに動いてったってわけ。」

「ばっかじゃない!あんたのせいでジャッジマスター(役職名)のミルク・ティ様や東京のジュリ(役職名)が全員借り出されてるのよ!」

彼の言葉に食ってかかったのはクーだった。ミルク・ティは二人の間に割って入り苦笑いをする。

「まぁまぁ。仕方がないです。こうなった以上は。私達は彼に引きずられた魂を審判しますので、あなた達はダークネスと共に彼を探し捕らえるのです。」

民族衣装で高貴ないでたちのミルク・ティーに対して、ダークネスは鳶色のコーディロイダブルジャケットに二藍色のスリムラインチノパンにブランド物のスニーカーとクーと同じでラフな格好をしている。
 辺りで仕事をしている人たちも民族衣装だったり、民間服だったりそれぞれだ。

「『レスト』に一段戻ってください。あなた達を応援してくれる方が待っています。そして、バーテンダーに彼の行き先についての情報を得てください」

「分かりました」

 三人は緊張した口調で言葉を返し深く頭を下げる。
キメラもクーもダークネスも言わずとも分かっていた。
時間がない・・。彼を捕まえるのに時間がかかればかかるほど、他の魂が彼の思いに引きずられ、生き物に想像を越える恐ろしい悪影響を及ぼす事を簡単に想像できた。
 彼女達は公園の木立を抜けミルク・ティたちを後にしビルが建ち並ぶ街へと飛び立った。

*つづく*

by mamikirakira | 2006-04-17 11:09 | 自作小説
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